S*STYLE TEA 京都校講師 ティーライフスタイリスト  砂川愛子さん
第5回 「とある国での紅茶のお話」

世界には日常的に紅茶を飲む国がたくさんあります。
日本ではお茶と言えば緑茶ですが、実は世界の茶生産量の7割以上が紅茶だと言われています。
紅茶の国イギリスをはじめインドやスリランカ、トルコにロシアに中近東・・・
日常的に紅茶を飲む習慣がある国は数え上げればキリがないほどです。

そのなかでも「えっ、この国で!?」と私が意外に思った国がありましたので少しご紹介したいと思います。

ある日のレッスン後に生徒さんとお喋りしていた時のこと、ジャマイカの紅茶が話題にあがりました。
「ジャマイカで紅茶??」
ジャマイカと言えば日本人が大好きなブルーマウンテンを生産するコーヒーの国。
一般的に私たちがジャマイカの飲み物と聞いて思い浮かぶのは紅茶ではなくコーヒーが多いのではないでしょうか?

ところが生徒さんによるとジャマイカでは現地の人はコーヒーより紅茶を飲む人のほうが多いと言うのです。

その話を聞いて思い出したのがタンザニアのこと。夫がキリマンジャロ登山に行った時のこと、
お土産に買ってきてくれたのはキリマンジャロのコーヒーではなく
キリマンジャロ産の茶葉を使用したイングリッシュブレックファストとアールグレイでした。

その時にもタンザニアはコーヒーの国なのに紅茶を生産したり飲んだりするのだな、と興味深く思ったのです。

ジャマイカとタンザニア、コーヒーの生産国でありながら現地の人々が紅茶を愛する国。
一見何の接点もないように思えるこの二つの国ですが、調べてみるとやはりと言うべき共通点はイギリスでした。

ジャマイカもタンザニアもその歴史においてイギリスが支配していた時代があり、イギリスの影響を色濃く受けています。
そのためコーヒー派よりは紅茶派が多く、紅茶は日常生活に欠かせないものとなっているのです。

例えばタンザニアでは紅茶の事を“チャイ”と呼びますが、紅茶と共に食される朝ごはんのことも“チャイ”と呼びます。

お砂糖をたっぷり入れた甘い紅茶(チャイ)は朝ごはんの基本です。
チャイとチャパティのセットがタンザニアの朝食の定番、
チャイにはミルクを入れたり生姜やスパイスを入れることもあるそうです。

タンザニアのチャイはマグカップに注がれ、ソーサーとともに出されます。
現地ではカップに入ったアツアツのチャイをソーサーにうつして飲むのが主流だそう。
単純に「紅茶が熱いから」というのが理由だそうですが、
かつてのイギリスで紅茶をソーサーに移して飲んでいた時代があったことを連想してしまうのは考えすぎでしょうか。

そしてジャマイカ。ジャマイカはかつて英国領であった影響から紅茶の種類が多く、
また安価で購入することができるという理由から昔から日常的に紅茶が飲まれてきました。

ジャマイカ大使館の方にお話を伺ったところ、ジャマイカの人々は外ではなく家で紅茶を飲むそうです。
ティーポットやティーカップにティーバッグをポンっと入れて紅茶を作るのが一般的だそう。

温かい紅茶に砂糖のみ、または砂糖とミルクを入れて飲みます。
朝食や夕食時に、午後4時のアフタヌーンティーの時間にはお菓子とともに、
イギリスの人々と同じく一日にたくさんの紅茶を飲むそうです。
ジャマイカで紅茶は栽培されていませんので、ティーバッグはイギリスやアメリカから輸入しています。

また、コーヒーをほとんど飲まないジャマイカの人々は、紅茶以外にミントティーやジンジャーティー、
ハイビスカスティーやセラシーティーといった、ジャマイカ産のハーブティーもたくさん飲むそうですよ。

イギリス人が愛してやまない紅茶。
世界中に茶園を拓き、旧英国領の国々に紅茶文化を根付かせるほどの紅茶への熱い思いが
ジャマイカやタンザニアの人々の日常生活に今も残り、紅茶が飲み継がれています。

そしてイギリスの影響を受け日常的に紅茶を飲む国はジャマイカやタンザニアだけでなくもっともっとあるはずです。
こうしている今も私たちの想像もしないどこかの国で、
人々が毎日紅茶を飲み暮らしていることを想像するとなんだかワクワクしてきませんか?

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