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恵泉フラワースクール 特別講師 倉上恵子さん
第2回 「英国のクリスマス飾り」

街中でもクリスマスの飾りつけが見られるようになりましたね。
今回は、玄関のドアを飾るクリスマスリースや、
部屋を飾るクリスマス飾りについて、お話ししたいと思います。

英国では、11月初旬になると、ロンドンのオックスフォード ストリートや、
リージェント ストリートで、名物のクリスマス・イルミネーションの点灯式が行われます。
私は家族とロンドン郊外のサリー州クロイドンに住んでいましたが、
そこでも街中は、クリスマス・イルミネーションでいっぱいでした。
その頃になると、家庭でもクリスマスを迎える準備が始まって、
サンプルブックから、両親や親戚、友人達に、今年はどんなクリスマスカードを送ろうかしら、
とカードを選ぶ事もクリスマスを迎える準備の楽しみのひとつでした。

スーパーマーケットの棚には、大きな缶のビスケットや、大きなパック入りのワイン等が並び、
ガーデンセンターやデパートでは、クリスマスツリーのオーナメントや、クリスマス用品が並ぶようになります。
12月初旬には、トラファルガー スクエアーにノルウェーから贈られる大きなクリスマスツリーが、飾られるでしょう。
今年の待降節「アドベント」は12月2日(日)に始まります。

クリスマス飾りに、常緑樹(evergreen)が使われるのは、どうしてなのでしょうか。
次のような、常緑樹にまつわる言い伝えがあります。
キリスト生誕のずっと昔から、ヨーロッパでは真冬に常緑樹と火を灯したキャンドルで家を飾る事は、伝統的なことでした。
英国でも、先住民族のケルト族が、ドゥルイド教の儀式に、常緑樹を飾ってお祝いし、
それを家に持ち帰って、家を飾っていました。
なぜなら常緑樹は、冬の間、常に葉をつけていて、生命の存続のシンボルとして見なされていました。
ヒイラギ(holly)、アイビーは、つやつやした緑をしていて、冬枯れ時でも枯れずに実をつけるので、
魔力・特別の力を持つ植物とされていたからです。
そして、不滅の象徴で、入り口のドアや窓などを飾り、火を灯したキャンドルと共に、
暗い冬の日々を打ち破るものとして人々は冬至にお祝いをしていました。
冬至は、春がもうすぐやってくるという事を、再確認するその年の変わり目で、
冬至を境に日が段々長くなり、太陽の光は強くなりますし、常緑樹は、豊作、繁殖力を表して、
生命の再生、成長、新しい収穫を約束するとして装飾に使われていたのです。

4世紀末に、12月25日にイエス・キリストの降誕をお祝いするようになるのですが、
昔から真冬に飾りつけに使われていた常緑樹は、キリスト教会でも取り入れて、クリスマスを祝うようになりました。

ヴィクトリア女王時代の1840年代に入ると、人々は、家庭中心にクリスマスを祝うようになり、
モミ、アイビーなどの常緑樹で、ドアや窓、暖炉の周りなどを、
芸術的にアレンジして飾るようになりました。
そしてその頃のクリスマス飾り、習慣 ― Victorian Christmas ― が、
今日の英国のクリスマス祭事の祖になりました。

それでは最初に、伝統的な色遣いのクリスマスリース をご紹介します。

□ 玄関のドアを飾るクリスマスリース(Christmas  Wreath)


(1)

(2)

(3)
(1) フレッシュグリーンにベルベットの赤いリボン、松ボックリ、ドライのバラの実のリース
(横浜ベーリックホール「クリスマス飾り」を担当した時の玄関のリース)
(2) ゴールド、グリーン、レッドの華やかなクリスマスカラーのリボンがアクセントのリース
(横浜・イギリス館「クリスマス飾り」を担当した時の玄関のリース)
(3) いろいろな木の実、リンゴやブドウ、赤いベリーのカントリースタイルのリース

クリスマスの言い伝えで、クリスマスに使われる色や、オーナメントには、次のような意味があります。

  1. リース・丸い環は、終わる事のない永遠のシンボルで、永遠に続く神の愛
  2. 常緑樹の緑は、イエス・キリストの永遠の命の象徴
  3. 赤は、キリストの降誕を告げられた全世界の喜びと、キリストの流した血
  4. ゴールドは、幼子イエスが誕生した事を知らせる星の輝き
  5. リンゴやブドウ、木の実などは、豊饒の象徴
    特にリンゴは、冬の間保存が効くので、神への捧げものとされていましたし、
    リンゴの木は、エデンの園の知恵の木でしたので、クリスマスの飾りに使われています。

写真のリースは、モミ、ヒバ、ヒムロスギの常緑樹を使っています。
クリスマスリースの作り方はいろいろありますが、
私は、短くカットしたたっぷりのモミやヒバなどの常緑樹の枝や葉を束ねて、
ワイヤーでリースの土台に巻きつけて作ります。
長い間、針葉樹の良い香りが楽しめるのでお奨めです。

□ キッシング リング(Kissing Ring)

キッシング・バウ(Kissing Bough)と呼ばれる大きなガーランド(Garland)*は、
伝統的なクリスマス飾りです。
ヴィクトリア時代には、居間の中央に、ヒイラギ(Holly)、アイビー(Ivy)、
ヤドリギ(Mistletoe)、イチイ(Yew)でガーランドを作っていました。
赤いリンゴもぶら下げられました。

*ガーランド:複数の花や葉をずらしながらワイヤー等で固定し、長く繋いだもの

ヤドリギは、ケルト族の儀式に使われた神聖な植物で、
英国では、昔から<ヤドリギの下のキッス>という独特の風習があり、
ヤドリギが飾られている下にいる少女に、実がついている間は誰でもキッスをすることが許されます。
クリスマスの時に、キスから逃げた女性は、その年、結婚の望みがないといわれていました。
そのため、最も逃れにくい場所である、ホールのシャンデリアや台所の天井から下げられました。
これは、女性が結婚し易くするための機会でもありました。
ヤドリギは、束にしてぶら下げるだけでなく、アレンジされて、Kissing Ring や、Kissing  Ball にして飾ります。

(4)
ベーリックホールの食堂の入口に下げました。
(5)
赤いベリーを入れました。

ヤドリギの実は、熟すとベトベトして落ちるので、アートのヤドリギを使っています。

□ 壁を飾るスワッグ(Swag)*と、サイドテーブル等に置くクリスマス飾り

*スワッグ: 花や葉のついた枝、果物などで作る飾り。吊るして飾りますが、
2タイプあり、1つは、両端を固定して、真ん中が垂れ下がるようにしたもの。
もう1つは、垂直、又は水平に飾るものがあります。

(6)
エンジェルの壁飾り(スワッグ)

(7)
ザクロとオレンジの壁飾り(スワッグ)
               
               (8)
               ゴールドの紐の手作りスターとローズヒップの壁飾り(スワッグ)

(9)
沢山の小さな木の実と
ミニリンゴのクリスマスツリー

(10)
赤いベリーと小さい木の実のクリスマスボールを
ハンギングスタンドに 掛けて。ヤドリギの実が入っているので、キッシング・ボールとして天井から下げても素敵です。
(11)
天使のいるトピアリーツリー

天使とオーナメントのギフトボックス、ゴールドの縁どりのリボンが、クリスマスの 雰囲気を醸し出しています。
木の枝の先端に固定した、小さな吸水スポンジに、短く カットしたモミ、ヒムロスギ、ヒバ等を挿して
丸い形になるように作ります。

これらは、恵泉フラワースクールのイングリッシュ フラワーアレンジング コースで私が作った作品です。
英国のクリスマスの雰囲気を感じていただけましたでしょうか。
今年は、どのようなオーナメントを入れてクリスマスリースを作ろうかと、今から 楽しみです。

“With  Every  Good Wish  for Christmas and the New Year!”

参考文献- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「キリスト教歳時記」 八木谷涼子著
「Victorian Christmas」  Valerie Janitch著
「A Celebration  of  Christmas 」 Caroline Harrington著
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