Cha Tea 紅茶教室 代表 立川 碧さん
第4回 「アンティーク画の中のティータイム」
こんにちは。Cha Tea 紅茶教室代表の立川です。
「アンティーク画の中のティータイム」、4回目の今回は
女性が大好きな「占い」をテーマにしたティータイムをご紹介します。
19世紀後半、紅茶は国民的な飲料となり、
大人から子供までもが日々何回もティータイムを楽しむようになっていました。
そんな中、流行したのが飲み終わった紅茶の茶殻で運勢を占う「紅茶占い」です。
紅茶占いは大衆文化ですので、いつから始まったのかははっきりしていないのですが、
1870年代の新聞広告には紅茶占いのシーンが残されているので、この頃には大衆に浸透していたと考えられています。
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それでは、当時の資料からヴィクトリア朝後期の紅茶占いの方法をご紹介しますね。
【1】ティーカップに茶こしを使わず紅茶を注ぎます。(茶殻がカップに入っても構いません)
【2】占いの内容を思い浮かべながら紅茶を楽しみます。
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【3】カップの底に一口分の紅茶液を残してティータイムを終えます。
【4】ティーカップを左回しに三回転させてから、ソーサーの上に裏返しに置き、
カップの底を軽く叩いて、残った水分を落とします。
【5】ティーカップを起こし、カップ内に残った茶殻の形を検証します。
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【6】カップの右側、そしてカップの縁に近い茶殻は「未来」を、カップの左側および底に近い茶殻は「過去」を表わします。
茶殻が何の形に見えるか、その形が何を意味しているのかが重要になります。
モチーフの解釈は、英国人が信仰や迷信、生活の中で抱いてきた「物に対するイメージ」で判断されました。
わかりやすく言えばハートの形ならば「恋の成就」。ハートが半分に割れていたら「失恋」です。
骸骨マークは「不吉」「死」、鍵のマークは「秘密」、猫は「裏切り」、蟻は「勤勉」などです。
モチーフの数は限りなくあるため、「紅茶占い用のモチーフ解説本」までも出版されることに!!!!
紅茶占いを専門にするロマ民族の占い師までも登場し、お金を払って占いをしてもらう人も出てきます。
家庭の中では、年長者がこれまでの人生経験を糧に「モチーフの解釈」をすることも多く、
紅茶占いは異なる世代が交流するきっかけにもなりました。
もちろん、秘められた恋については、一人きりでドキドキしながら紅茶占いをする女性も多かったことでしょう!
各陶磁器ブランドは1920年代〜1930年代にかけて、「占い専用」のティーカップを考案しました。
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紅茶占いだけですと、カップの縁に付いたハートのマークは「未来の恋の成就」止まりの結果しか出ませんが、
そこにトランプの図柄がデザインされたティーカップが登場することで、
「カップの縁(未来の位置)」部分にプリントされた→「トランプのクラブのキング」の上に→
「ハートの茶殻」が乗る・・・と情報が増えるのです。
クラブのキングがもともと持っている意味
「信頼できる年上の男性・思慮深い・友情に厚い・統率力・実力者・交渉上手」を加味した、
「未来に、人の上に立っている年上の男性と恋が成就する」という占い結果が導かれ、より、想像力が増すのです。
エインズレイ社も当時たくさんの占いカップを販売しており、アンティーク市場で人気の高い商品になっています。
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◇ アンティーク画 参考文献
(1)
1918年 消印のハガキ/ロマ民族の紅茶占い師とレディ
(2)
1886年 「Great Atlantic & Pacific Tea」社の宣伝広告/恋占いをする貴婦人
(3)
1934年 「Lipton」社広告媒体/紅茶占いマニュアル本より
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1920年代 窯元不明
(5)
1926年 エインズレイ社