フリーランス・ライター/英国アンティーク研究家 小関由美さん コラム
第4回 「英国ドラマとアンティーク」
子供の頃から映画が好きで、たぶん親の影響だったと思います。
私の母は映画だけでなく、宝塚歌劇の大ファン。
さらに歌舞伎、商業演劇など、とにかく毎日のように劇場通いをしていました。
私が最初に記憶のある映画はディズニーの「バンビ」、
その後「メリー・ポピンズ」にはまってレコードを買ってもらい、
意味もわからず英語の歌を覚えました。
けれど「アラビアのロレンス」は難しく、当時は理解できませんでした。
見ていたのはほとんどがアメリカ映画でしたが、
イギリスを舞台にしたものが多かったのに、大人になってから気がつきました。
ディズニー映画「101匹わんちゃん」に登場する
ハムステッド・ヒースの近くに自分が住むことになるなんて、
当時の私は想像もつきませんでした。
今でも映画が好きで、たまに映画館に出かけます。
しかしその回数は以前より減って、主に見るのはテレビ、
それも地上波よりスカパー！WOWOWといった有料放送です。
イギリスに住んで以後、イギリスを舞台とした映画は欠かさず見るようになりましたが、
最近のお気に入りは、英国ドラマ。
映画よりもシリーズになっているので、長く楽しむことができます。
「主任警部モース」「セルフリッジ英国百貨店」「ホワイトチャペル」「シャーロック」と、
お気に入りはいくつかありますが、
中でもはまっているのは「ダウントンアビー−華麗なる英国貴族の館」です！
イギリスに住む友人から「とてもおもしろいからぜひ見て」と
以前からおすすめされていたのですが、スカパー！で放送され、
すぐに大ファンになってしまいました。
現在は、NHKの地上波でシーズン２が放送中で、DVDも発売しています。
とにかく、時代設定が私好み。ヴィクトリア朝時代以後、
「大英帝国」と呼ばれたイギリスにやや陰りの見え始めた時代、1912年から
物語はスタートします。この企画・脚本を担当したジュリアン・フェローズは、
「イギリスがいちばん激動の時代、1890年からの50年間をこのドラマで描きたかった」
とインタビューで語っています。
彼は、このダウントンアビーのベースともなっているアメリカ映画
「ゴスフォード・パーク」の脚本を担当し、アカデミー賞を受賞しました。
こちらの映画も必見です。
人によっては貴族とメイド、という設定に注目するかもしれません。
ただ、この設定が「ご主人様とメイド」という階級制度だけに
焦点をあてているだけでなく、
ダウントンアビー屋敷を舞台とした人間ドラマ、
サスペンスも描かれているため、次々と見たくなる構成となっています。
この物語はフィクションですが、ところどころに事実をちりばめています。
第一話のタイタニック号沈没のニュースから始まり、婦人参政権、戦争などなど、
それらが物語にリアリティを与えています。
舞台となっているダウントンアビー屋敷は、ドラマの中ではイギリス北部、
ヨークシャーの設定ですが、実際にはバークシャーにあるハイクレア城で撮影されています。
そのハイクレア城の持ち主で現在もそこに住んでいる、
カナーヴォン伯爵の祖母であるアルミナさんが、
ダウントンアビーに登場する
伯爵夫人のモデルになっていると言われています。
アルミナさんはアメリカの大富豪ロスチャイルドの隠し子で、
莫大な持参金と共にイギリスに嫁ぎました。
ダウントンアビーでも、伯爵夫人はアメリカ人という設定であり、
ダウントンアビー主要出演者36名の中で、伯爵夫人役の女優だけが唯一のアメリカ人
（その他の俳優はすべてイギリス人）という細やかな設定もまた、
私のようなマニアの心をぐっとつかむのかもしれません。
私は、このドラマに登場するアンティークにも釘づけです。
アップステアーズと呼ばれる、階段上、つまりお屋敷の階上に住む貴族たちの衣装、
持ち物、部屋のインテリアはもちろんのこと、
ダウンステアーズ、階下の召使いたちが動き回る地下に登場するものたちからも目が離せません。
そんな中で、私が持っているヴィンテージ品がキッチンの片隅に登場しました！
ショッピングリスト・ボードと言われる、買い物リストです。
1930年代製で、撮影に使われたのは私のものより大きな正方形でした。
ぜひ画面で探してみてくださいね。
このドラマは登場人物も多く、歴史的背景や階級社会、貴族の財産継続問題など、
やや複雑な設定となっているので、一話見ただけだと、ちょっとわかりづらいかもしれません。
お正月や長いお休みがあるときに、まとめてゆっくりごらんいただくのをおすすめします。
イギリスでも大評判で、現在シーズン５まで放送され、シーズン６の撮影も決定しているそうです。
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< 小関由美さんからのおしらせ >
2015年2月に、ダウントンアビー関連の講座を開催致します。
●英国「ダウントンアビー」アンティーク物語
青山教室：https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1033561.html
横浜教室：https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1027496.html
●ダウントンアビーのお茶会
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1033571.html
※お問い合わせ、お申込みは、NHK文化センターまでお願い致します。
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