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フリーランス・ライター/英国アンティーク研究家 小関由美さん
第5回 「イギリスのクリスマス」

英国王室御用達の高級ホテル「ゴーリング」の
アフタヌーンティーのお菓子は、
クリスマス・シーズンに行くとスノーマンに。

実を言うと、イギリスできちんとしたクリスマスを味わったことのない私。
というのもロンドンに住んでいた1989年当時、
イギリス人のクリスマスの過ごし方は、家族とすごすのが当たり前。
イギリス人の友人たちはふるさとへ帰ってしまうし、
お店やレストラン、ミュージアムも閉まっており、なんとバスや地下鉄もストップするという、
なんにもできない、することのない寂しいホリディになるので、
クリスマスを迎える前に日本へ帰っていました。

今やレストランも早くからクリスマスディナーの宣伝をしていますし、
友人たちとクリスマスをすごす人も増えてきましたが、
基本的にクリスマスは家族とすごすという習慣は、あまり変わりがないようです。

とはいっても、イギリスではクリスマスを今のように祝うことが一般的になってきたのは、
ヴィクトリア朝時代からの風習です。
ツリーはドイツの血を引くヴィクトリア女王の夫、アルバート公が持ち込み、
家族で祝うイベントの象徴としました。
またイギリスの有名な作家・ディケンズによる小説「クリスマス・キャロル」がヒットしたのも、
庶民がその風習を取り入れるのに拍車をかけた、といわれています。

2013年11月末に訪れたときに飾られていた
コベント・ガーデンのクリスマス・ツリーと、
マーケットのディスプレイ。
同じツリーが時間帯によって、ライトアップ。

私が住んでいたときから時代を経て、今ではイギリスの友人たちは、
ふるさとへ帰って親とすごすよりも、ロンドンの自宅でクリスマスを迎えるという人が増えてきました。
イギリスでも核家族化が進んでいるからかもしれません。
そしてクリスマスの名物ともいえるロースト・ターキーも少人数の家族では大きすぎるため、
最近はチキンですませる家族も増えています。

ロンドンの料理道具店&クッキング・スクール
「ディバーティメンティ」で習った、
ベジタリアン・クリスマスのごちそうメニュー、
サラダとナッツ・ローフ。

イギリスのクリスマスケーキは日本のものより地味で、
フルーツケーキにシュガー・コーティングしたものが一般的です。
最近ではシュトーレンやパネトーネを食べる家庭も増えてきました。
でも老いも若きも、男性も女性も、スイーツ好きなイギリス人たちのこと、
クリスマスケーキだけではすみません。
クリスマス・プディングと呼ばれる、クリスマスケーキよりも歴史の古い、独特な温かいデザートや、
ミンスパイという、ドライフルーツをたっぷりと使ったパイ、
チョコレートなどをたんまりと用意しておくのです。
ターキーなどもごちそうも含め、日本でいえば、お正月のおせち料理のようなものかと思います。

私の大好きなロンドン最古のレストラン「ルールズ」も、
クリスマスの頃にはライトアップ。
ローストビーフがおすすめですが、
ゲームと呼ばれる野鳥料理が有名です。

イギリスの有名な陶器ブランド「エマ・ブリッジウォーター」のエマさんに、
クリスマスの前にインタビューしたときのこと。
どんな過ごし方をなさっているのか、雑談がてらお聞きしたことがあります。
ロンドンにも自宅のあるエマさんですが、
クリスマスは故郷のストーク・オン・トレントの実家に戻り、家族と過ごすそうです。
「子供の頃は、クリスマスといえば家族でウォーキングとハンティングをしたのが、いい思い出」
だそうです。今はもうハンティングはしないそうですが、
ごちそうでおなかいっぱいになったら、ウォーキングはしているとのこと。

クリスマスのごちそうといえば、私のイギリス料理の先生、
メアリーさんのお宅へ10月にお邪魔したときのこと。
「あなたはイギリスに住んでいたとき、クリスマスにさびしかったのですって?
では今日、あなたにイギリスのクリスマスを過ごさせてあげましょう」と、
ロースト・チキンを焼いて、クリスマス・プディングを作ってくれました。
時季が時季だけにターキーは手に入らず、チキンとなりましたが、
これはほんとうにうれしいサプライズでした。
プディングは作ってすぐ食べるものではないので、
その場で食べずにプディング型ごといただいて帰りました。
今でもその型は、我が家で活躍しています。

1953年のギネス・ビールの広告。
プラム・プディング(クリスマス・プディングの別名)や
ターキーなど、
代表的なイギリスのクリスマスのごちそうを紹介しています。

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