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英国食文化研究家/BRITISH CAKE HOUSE オーナー 小澤桂一さん コラム
第6回 「使って生かす食器の美しさ」

先日私どものサロンBRITISH CAKE HOUSEでは10周年のイベントを開催した。
ここには日本各地より英国菓子教室にご参加頂いてる淑女の皆様と、関係者のゲストの
皆様にお集まりいただき、2日間に渡り記念のひと時をご一緒していただいた。

この記念パーティーを開催するにあたって、イメージした空間を想像した時、
ぜひ英国の名窯エインズレイの食器で会場を統一させたいと考えた。
そこで香川社長にこの旨お願いをすると、すぐに良いお返事を頂戴した。

「きっとこれは素敵な空間を演出できるだろう」と、とても嬉しい想いになった。

今回テーマにしたシリーズは「イングリッシュ・バイオレット」
日本人の多くの方々の感覚で、花柄は理解しやすいアイテムだが、
この「紫色」の美しさを想像できる方は少ないかも知れない。
パンフレットや資料で見た時、この色で統一することに躊躇される方もいるのでは。

しかしこの繊細で魅惑的なこの色彩とエレガントな花柄のデザインは、
実際にお菓子や紅茶を淹れると、一瞬にして美しく華やかな美貌に支配される
美しい世界へと誘う。

おそらく誰もが体験したら、この器たちを自身のものにしたいと願うのではなかろうか。

それは輝いた宝石の美しさとはまるで異なる。
ただ自らを装飾することで輝いたものに見せるのではないのだ。
美しい食器とは、それを表現として実際に使って奏でられた時、
宝石よりも遥かに美しい「美」を作り出すのだ。
それを言葉に表すとしたら、「豊かさ」という言葉が最適なのだと思う。

つまり身に着けたその人だけを輝かせるのではなく、美しい食器とは、そこにある空間、
そして人々、ましてや時間までもを美しい「世界」へと導くのだ。
この世界を友人と共有できる喜びは、豊かな美しさだという訳だ。

ここでお伝えしたいのは、食器とは飾り、並べ、見るだけではその豊かさに触れられない
という事。
高級食器であっても、生活の中で共存し、使って生かすことでその本当の良さに出会う。
それを感じられるのもやはり人間だからこその感覚である。

こうして生まれる、人が輝かせてあげてこそ成立する文化こそが芸術なのだろう。

パーティーとはそうした華々しい空間を演出することも出来る良い機会。
日常ではいつでも良いものを使い続ける訳にもいかない。
ぜひ日本でももっと気軽にこうしたパーティーを開いて頂きたい。
特にティーパーティーで自分で作った菓子を並べたら、美しいだけでなく喜びもある。

「おもてなし」とは、こうした自分自身の努力と、芸術品との融合であることが大切である。

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