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Cha Tea 紅茶教室 代表 立川 碧さん
第5回 「アンティーク画の中のティータイム〜クリスマス編」

こんにちは。Cha Tea 紅茶教室代表の立川です。
少し久しぶりになってしまいましたが、
「アンティーク画の中のティータイム」、5回目をお届けします。
今回のテーマはヴィクトリア朝のクリスマスに欠かせない「クリスマス・プディング」を
素敵なアンティーク画と共にご紹介します。

英国のクリスマスは19世紀後半、ヴィクトリア朝に現代の姿に近づきました。
クリスマスツリーを飾り、ターキーを用意し、クリスマスクラッカーを鳴らす習慣も
この時期に定着しました。
ハリーポッターの中に描かれているクリスマスシーンを想像してみて下さい。

そんな英国のクリスマス・ディナーに欠かせないメインデザートの「クリスマス・プディング」は、
1861年に出版され200万部もの売り上げを上げた『ビートンの家政本』のなかにも
可愛らしいイラストと共にレシピがのっています。


(1) 1880年版「Mrs Beeton's Book of Household Management」より

もともと、フルーツ入りのプティングは18世紀前半ドイツ人のジョージ一世が英国王として即位し、
英国で初めてクリスマスを迎えた際に口にしたお菓子として知られていました。

国王に倣って上流階級の人々がクリスマスにフルーツ入りのプディングを楽しむようになり、
さらにヴィクトリア朝の大衆作家チャールズ・ディケンズが著作『クリスマスキャロル』のなかで、
労働者階級の家庭がプディングを食べるシーンを、とても美味しそうに描いたことにより
大衆にまで普及し、「クリスマス・プディング」の呼び名が一般化しました。

秋に入ると、各家庭では一家の主婦が先導を切りクリスマスの準備を開始します。
まずはクリスマスシーズンを快適に過ごすための保存食作り。

英国では、キッチンの他にパントリーと呼ばれる食料保管庫を持つ家庭が大半です。
このパントリーに、ジャムやフルーツの砂糖漬け、洋酒漬けのドライフルーツなど
お菓子の原料となるものを保管していくのです。
パントリーの中には、紅茶を保管していた家庭もあったようです。

1枚目のアンティーク画では、せっかく作ったジャムを子供たちが味見してしまい、
監督役の乳母は大慌て、両親は呆れてしまう・・・なんてシーンが描かれています。
よく見ると、棚に紅茶の保管容器も並んでいますね。


(2) 1860年「The Illustrated London News」誌より 

12月に入ると、漬け込んでおいた洋酒漬けのドライフルーツを使用し
「クリスマス・プディング」作りがスタートします。

英国ではクリスマス当日の4週間前の日曜日を、
プティングを作り始める「かき混ぜ日(スター・アップ・サンデー)」としています。

ご紹介する2枚目のアンティーク画では、
使用人が子供達と一緒にクリスマス・プディングを作っている様子が描かれています。


(3) 1892年12月17日「The Illustrated London News」誌より

使用人がプディングをかき混ぜています。
子供たちは楽しげに、身を乗り出してその様子を見ています。

中産階級以上の家庭ですと、プディング作りは使用人がメインになって行いましたが、
プディングの生地を作る時に、願い事を唱えながら混ぜる・・・という習慣がある為、
普段は台所に立ち入らない一家の主人や奥様、そして子供たちも、みんな台所に集まり、
一緒に生地を混ぜあわせていきました。
普段は見られないクリスマスならではの特別な光景です。
ちなみにかき混ぜる時は、反時計周りに1人1回ずつがルールだったそうですよ。

プティングはかき混ぜられた後、大釜にいれられ、時間をかけて蒸して仕上げられます。
そしてクリスマス当日まで保管されます。

さて、クリスマス当日、完成したクリスマス・プディングは
家族が待つダイニングルームへと運ばれていきます。


(4) 1867年12月21日「The Illustrated London News」誌より

絵のなかには湯気のたったクリスマス・プティングを、満面の笑顔で運ぶ女性が描かれています。
楽しいクリスマスパーティーが行われていることが伝わってきます。

アガサ・クリスティーの代表作、名探偵ポアロシリーズの『クリスマス・プディングの冒険』では、
このようなヴィクトリア朝にならった伝統的なクリスマスの一日が詳細に描写されています。

とうとうテーブルにクリスマス・プディングがのりました。
みんなの視線が大きなプディングに注がれています。


(5) 1868年12月19日「The Illustrated London News」誌より

クリスマス・プディングには作る際に、銀で作られたチャームが中に仕込まれています。
コイン、指輪、そしてお裁縫用の指ぬきなどを入れて焼き、翌年の運を占うのです。
占いの意味は地域により異なってきますが、ボタンは一生独身、蹄鉄や星は幸福、コインは金運を、
熊は強さ、お裁縫用の指ぬきや指輪は愛や結婚の象徴…などといった意味合いが込められており、
パーティーの盛り上げに一役買ったようです。

クリスマス・プディングはディナータイムのデザートなので、
合わせる飲み物はスパイスが入ったパンチなどアルコールがメインになりますが、このあとは、
さらに場所を移動してクリスマス用のケーキと一緒にティータイムを楽しむのが一般的でした。
きっと、クリスマスならでは、家庭の中で最も上等なティーセットを出して
ティータイムを楽しんだことでしょう。

皆さまは今年のクリスマスケーキはもう決められましたか?
最近は日本でも英国のクリスマス・プディングを購入することが可能になってきています。
もちろんレシピもたくさん出回っていますので、
来年は早めにドライフルーツを漬け込んで手作りされるのも楽しいかも知れません。

今年のクリスマスは、ぜひお気に入りのデザートと、お気に入りのエインズレイのティーセットで
心温まる時間をお過ごし下さい。

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