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英国食文化研究家/BRITISH CAKE HOUSE オーナー 小澤桂一さん
第1回 「イギリスの食の美しさ」

イギリスの風景は、とても美しい。
よく知られ有名なコッツウオルズや湖水地方などに限らず、
イギリスを巡っていると「なんでこんなに美しいのだろう」と思う瞬間が時々、いや頻繁にある。
その出会いは強烈な印象として心に刻まれ、ふと子供の頃にみた、絵本や絵画のような風景が、
忘れていた記憶の森の奥底から蘇える。
初めて出会ったにも関わらず、どこかとても懐かしく、心がふと温かくなる感覚。

私は旅をするのが好きで、世界の沢山の場所を訪れてきた。
とにかく心地よく、気分がよく、贅沢を探し求める貪欲さだけは一流と自負しているので、
風景にしても、とてつもない美しさを求めていつでも彷徨っている。
偉大なる大自然に動物が抱かれる大地も好きだし、
限りなく透き通る青い海の楽園のリゾートも好きだし、
古代の遺跡が砂から掘り起こされる悠久の浪漫も好きだし、
熱帯のジャングルに潜む未知なる生物への憧れもあるし、
大都会の高層ホテルから見下ろす眩い夜景を仰ぐことも好きである。

しかしながらイギリスで出会う風景は、何故かいつまでも新鮮で衝撃的なのである。

イギリスの風景何故なのか?それは確かに人にもよるし、
好みの問題かも知れない。
でも私の考えではおそらく、自然の魅力を人間だからこそ活かすことが出来、石や木といった自然に近い物質で人が作り上げる建造物と自然の上に存在する姿そのもののバランスが心地よく感じるのではないか、
と自分なりに分析している。
自然から得た知識や経験を活用して、
人が自然物質を利用して共存しうる相互関係。
文化・文明が進化し向上すればその知恵はやがて美術・芸術とも成り得る。例えば、木と土と草で作っていた家が、やがて石を使う事により快適な居住環境や巨大な 建造物を作り上げ、長い年月の歴史を伝えるものとして現在でも利用し愛されていたり、
石や木から作った水を飲むための容器が、火を使い、土をこねて焼き上げた土器になり、
やがて硬度な磁器が生まれ、ついには愛らしい花を模した柄付きの美しい陶器が完成し、
それだからこそ美味しい紅茶を飲み、心地よい時間を楽しむ為の道具に至ったことが理解できる。

風景もしかりである。
諸外国の先進国であれば当然、高層ビルを実現する鉄筋コンクリートに憧れ、
落としても割れないプラスチックのカップや手軽な紙コップを重宝するだろう。
だからといって真逆の自然ライフを追求する、原住民のような古代の生活を取り入れる事は、そんな根本的な心の作用からイギリスを見てみると、実に深くて温かく、そして何とも贅沢で優雅な英国ライフスタイルが見えてくるだろう。快適さとは比例しない。

イギリスの村風景 イギリスでは写真の様に、
当たり前に数百年と変わらない村の風景が点在し、
一見古めかしく見えるが室内は現代的な快適な空間が
存在している。
つまり心地よいとか、美しいとか、
つまりは心がホッとするようなものたちは、ほどほどのバランスを追求するところに「安らぎ」は存在しているようだ。
そう考えるとイギリスの風景の美しさは文化であり、
芸術なのである。

そんな根本的な心の作用からイギリスを見てみると、実に深くて温かく、
そして何とも贅沢で優雅な英国ライフスタイルが見えてくるだろう。

その情景に溶け込む人々の自然回帰志向は、
当然美しい草花を取り入れたティーカップ等に一つの表現として到達することが理解できる。
美しい陶器に人の心が動くのは、こうした視点から見てみると面白いし、
実はそれこそがその国の美術や芸術の見方であるとも言えるのだ。

さて、ここで考えてみたい。
そんな美意識のある食卓の風景が存在するイギリスは、本当に料理が美味しくないのだろうか?
実は「イギリスの食は美しい」。それを探っていきたいと思う。

イギリスの街並み

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