第1回 「紅茶工場のティータイム」

 スリランカの茶摘みさんたちが摘み取った生葉は、
8時間から13,4時間、温風や風に当て、水分が50パーセント
ほど抜けた状態まで萎らせます。それから揉捻機という直径1.5メートル
くらいの石臼のような機械に入れて、ぐりぐりと揉むのです。

 製茶作業はたいてい深夜の2時、3時から始まり、朝の8時か9時ごろ
には終了するのがパターンです。そのため、工場見学に行く場合は
早朝に行かないと、稼働している機械や、新鮮な出来立ての紅茶の香りを嗅ぐことはできません。

 紅茶の香りは季節によっても変化しますが、分析するとバラ、スミレ、
スズラン、沈丁花、三つ葉やせり等の緑っぽい香りも含まれ、さらに、
枯葉、木の皮、柿やパパイア等の熟したフルーツの香りも混じって
います。このような香りを嗅ぐと、安らいで、ほんわりとリラックスした
気分になります。

 工場の作業が終わると、機械は水で綺麗に洗浄され、床もぴかぴかに洗います。
 休憩室の中から笑い声が聞こえてきて、中をのぞくと皆で紅茶を
飲んでいました。今朝出来たばかりの新茶です。それぞれの手には
赤や黄色のプラスティックのコップ、弁当箱の蓋、色々なものに
紅茶が注がれています。
 バナナの葉っぱに包んだ食べ物を回していて、中に白い米のような
物を手でつまんで食べています。ココナッツのカレーでした。差し出され、
私も一口。
 「うまいね」
 と、日本語で言うと、全員が笑います。
 一番きれいなカップに紅茶を入れて出してくれました。ゆっくりすすると、
甘い香りと優しい渋みが広がって、ココナッツカレーをすーっと流していきます。
もう一回、
 「うまいね」
 またみんなが笑って、意味は分からないけどみんなも、
 「うまいね」
 私もこの瞬間から彼らの仲間です。

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