第8回 「アッサムの紅茶とチャイ」

 日本の茶園で6月と言えば、新茶の茶摘が終わり次の夏茶に向かって、
一休みしているところです。
ところが、紅茶の本場インドのアッサムでは、茶葉の成長が一番いい季節で、
一芯二葉か三葉で茶摘した後、なんと、ほんの一週間ほどで
また次の新葉と新芽を摘むことができるのです。
茶葉は大きく、長さが10センチから大きいものは15センチほどの大葉もあります。

 茶園は平坦で、緑の水平線が続き、気温は34〜5度Cにもなり、
湿度も70〜80パーセントと蒸し暑く、茶摘さんたちには苛酷な労働です。
茶葉は全て手で摘み、背中に負った籠や袋はすぐにずっしりと重くなります。

 この時期に摘んだ茶葉で紅茶を作ると、芽の部分が金色に輝いていて、
これをゴールデンチップと呼びます。オーソドックス製法という茶葉を
大きいままで製茶すると、紅茶の茶葉の長さが1センチから2センチもの
大きさになり、オレンジペコー(OP)と呼んだのです。

 アッサムの紅茶を淹れると、水色は橙色になり、芽の部分に付いている
細かい毛のような繊維が、カップに埃のように浮かびました。
これを白(毫)、中国語でペッホウと言ったので、橙色はオレンジ、ペッホウは
PEKOE(ペコー)、つまりOPという茶葉のグレード名が誕生しました。

 アッサムで紅茶が作られるようになったのは、1840年からです。
スコットランド人のC.Aブルースが、アッサムで生育していた茶の木を栽培して、
紅茶に仕立てました。
現在アッサムの紅茶は世界一の生産量を誇り、年間72万トン、
インド全体では98万トンですから、70パーセント以上がアッサム紅茶です。
しかし、60年ほど前から、アッサムの紅茶は、CTC加工茶と言って、
顆粒状に作る方法が取り入れられ、現在は、生産量の90パーセント以上が
CTC紅茶になっています。
CTC茶は、茶葉の部分だけでなく、茎や軸も一緒に製茶され、
飲むことができるので、濃く感じるのですが、少し甘口で飲みやすく、
さらに、インドのチャイを作る材料としてとても重宝されています。

 チャイは牛乳を70パーセントも入れて作るインドのミルクティーです。
砂糖がたっぷり入れられ、生姜やカルダモンなどのスパイスも入っています。
甘くて濃くて、でもさっぱりしていて、これを飲むと熱暑の中でも元気が出てきます。
赤土で作られたチャイ用の粗末な器、クリといいます。
飲んだ後は地面に捨てると割れて、また土に返ります。

 チャイ屋さんの前にはいつも沢山の人だかりができていて、
出来たてのチャイが飛ぶように売れています。お金がなくても
側にいると、そのうち誰かが一杯ごちそうしてくれるのです。
チャイはインドの人たちの心も繋いでいます。

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